
食と旅からさらなる物語を紡ぐ、『Hanako』の動画
話を聞いた人:『ハナコ』編集部・藤田佳奈美読者との“入口”を広げる動画戦略
――『Hanako』のYouTube動画は、Web連載や本誌特集と連動していますね。動画化する狙いはどこにありますか。
藤田:2025年5月から本格的に動画制作を始めました。Hanako Webオリジナル連載の「今日はあの街で、ひとり呑み」や「車にのって、手しごとが生まれる場所へ」を動画化することで、店の空気や街の雰囲気などを表現できています。本誌の沖縄特集と連動した動画では、誌面で登場したガレッジセールのお二人に出演いただき、地元民ならではの視点で名店を紹介しました。誌面には載っていない情報やコンビの掛け合いなどを映像で補完できるのが動画の大きな魅力です。
――動画が入口になり、誌面やWebに戻ってくる動きもありそうです。
藤田:はい。入口はさまざまでも、最終的には“『Hanako』の世界”にたどり着いてもらえるよう意識しています。
日常を映す小さな動画
――一方で、日常的な企画もありますね。
藤田:「編集部の今日のおやつ」動画がその一例です。本誌の「横浜特集」発売時には、横浜銘菓を集めて毎日紹介しました。スマホで撮った簡易的な動画ですが、“『Hanako』といえばスイーツ”という期待に応えたい想いと、『Hanako』の動画から本誌も見てほしい想いで企画しました。毎日無理なく続けられるようにシンプルな雛形を用意してアルバイトスタッフに制作を依頼したところ、そこからさらに工夫を加えてくれて。この企画を通してチームの士気が高まっているのを感じています。
――大規模な特集とは異なる親近感を与えていますね。
藤田:そうですね。日常の延長にある動画だからこそ、距離の近さを感じてもらえると思います。
データと感性のバランス
――制作の方向性はどのように決めているのでしょうか。
藤田:毎週Web記事のデータを分析し、読まれるテーマやクリック率の高いサムネイルなどログを分析してチームに共有しています。YouTubeやWeb、誌面などプラットフォームごとに読者層が異なるため、傾向を見ながら改善しています。ただ、数値だけに頼るのではなく「『Hanako』らしい世界観」を守ることが最も大切です。
――短期的な成果より、ブランド全体への信頼を重視しているわけですね。
藤田:はい。まずは「『Hanako』はこのクオリティの動画を発信できる」と示すことが重要だと考えています。雑誌、Web、SNS、動画がそれぞれ入口となりつつも、「これは『Hanako』だ」と感じてもらえる一貫性を育てていきたいです。
誌面を映像で深める動画、日常を切り取ったおやつ動画、そしてデータと感性を行き来する制作姿勢。『Hanako』のYouTubeはまだ“挑戦の段階”ですが、その根底には 『Hanako』が大切にしてきた「食と旅で暮らしを豊かに」という変わらぬ思いが流れています。次にどんな物語が映像になるのか、楽しみです。